環境就職がわかる!・連載よみもの
えこわーくトリビア〜素晴らしき環境就職〜

第8回:「環境省のお仕事をしてみる。」

執筆:エコ・リーグ キャリアサポート部長 小林功英

 

■政策にすぐに関われる?!

 環境問題の解決には、国による政策が欠かせない。こんな想いで、環境省の職員にあこがれる人もいるのではないか。

 結論を言おう。

 環境省に限らず平均的な官僚は、自分のアイディアを政策として提言し、実現させることができるポジションに就くまでに、入省してから7、8年〜10年程度はかかる。その下積み期間では、巨大な官僚機構の、まさに歯車として働かなければならない場面がほとんどとなる。あなたはその長期間の下積みに耐えられるだろうか。

 もっとも、官公庁に限らず、「組織の大きさ」と「ある程度の裁量を与えられるまでの年限」は、比例関係があると考えてもらいたい。それは、個人に与えられる裁量が大きければ大きいほど、しっかりと個人としてキャリアを積み、スキルを磨き、判断力を養わなければならない、ということの裏返しだと考えてもらっていい。

 

■環境省は「国の環境部」

 環境省に限らず、国家公務員は大きく分けて主に次の5つの仕事をしている。

(1)法律・政令・省令等の政策・ルール作り、
(2)国会対応(政策を法律などの形として実現するための国会議員への説明、資料提供、国会での質問内容の取材と大臣等の答弁の作成など)、
(3)形となった政策を現実に実行するための予算要求や執行、税制作り、
(4)審議会から国際会議まで、政策づくりの基礎となる各種会議の資料作成・運営等、
(5)行政の計画・白書等の執筆など政策の広報作業、などである。

 どの作業も基本はデスクワークで、パソコンでの文章執筆と他省庁との各種文章の一字一句の文言の調整が主になる。調整は電話やメールでやることも多いが、対面で行うことも多い。外出時は、国会議員や各種会議の委員への説明、根回し等を行っている。国内・海外への出張回数は部署により変動する。

 また、環境省の場合は、いわば「企業の環境部」と同じく、「国の環境部」として、率先して環境の取り組みを進める立場なので、関係省庁や政策対象者(業界団体など)との「調整」が必然的に多くなる。環境省の政策案は、関係省庁や業界団体から何かと突っぱねられるので、何とか折り合いを付けられないか、電話やメールで情報交換などを行うのはもちろん、積極的に他省庁や企業の方々と意見交換を行うための打合せの会合を開いて議論するのだ。

 ただし、予算も人も十分ではなく、全省庁で残業が最も多いと言われ職員の苦労が多いのも現実である。ある職員は、「残業代を時給に直すと100円くらいの時も・・。多忙なときは、朝の3時に家に帰り、シャワーを浴びて、7時くらいに出てくることもありますよ」と嘆く。コンサルと同じく、相当の「体力」が求められるわけだ。加えて、環境省は、もっとも新しい官庁であり、後押ししてくれる政治家がほとんどいないので、影響力は非常に弱い。政策は、立案時よりも実現段階での調整が、もっとも難しいと言える。そのため、環境省が提案している「環境税」などの政策が、中々実現に至らないのだ。

 

■1年目からの仕事の変化

 初めに、1年目から政策には関われないと書いたが、それではどのような仕事をしていくのかを見てみよう。

 まず、1年目の職員の3分の1程度は各部局の総括課に属し、官房や他省庁から各部局に対する窓口として、あらゆる資料作成のとりまとめを行う、部局全体の「統括窓口業務」を行う。

例えば、他省庁が法律や計画や白書などを作成するときに、先方から送付された案について内容を理解した後、部局内の関係する課室にコピーを配布、先方への質問照会事項と意見を先方の指定する期限(通常48時間)内にとりまとめる。その内容について、案件の重要性に応じて、上司である部局の総括係長、総括課長補佐、総括課長、部局長まで確認を経た後、先方に提出するといった流れとなる。また、残りの者も、各原課の窓口ポジションに配属され、課内に降ってくる仕事を関係者に振り分け、その取りまとめを行う、といった業務に従事する。

  2年目又は3年目で、部局全体をとりまとめる総括課から、具体的な個別業務(大気汚染や土壌汚染、地球温暖化対策、国立公園の管理等)を扱う原課に異動し、個別分野の政策立案に従事する。具体的には、法律・政省令の改正、年次報告書の執筆、観測データのとりまとめ、予算の執行(公共事業のようなハードから、委託研究報告書の契約先の選定・内容チェック・編集・記者発表の対応等のソフトまで多種多様)、省内幹部や国会議員等への説明資料の作成と上司による説明への同行・メモとり、国会答弁の作成、審議会の資料作成・議事運営、企業や自治体からの法解釈の相談や事件対応、国際会議への出張等・・・。通常、係長、課長補佐、課長等とのチーム作業になるが、仕事の大半は上司や総括課などの指示により仕事がやってきて、ボトムアップで若手職員が資料の原案の作成、省内外の関係者との連絡・調整などを行う。

 その後は、1年〜2年くらいで省内の異動や他省庁への出向を繰り返していくことになる。実際に政策立案の中身に関わったり「調整」作業を行ったりするのは、係長以上になってからが多い。概ね、3〜5年目位から係長級のポジションに就くが、そのくらいのポストから、段々と中身に関われるようになってきて、課長補佐程度になると細かい事務作業は全体の3割程度となり、あとは良いアイデアをいかに政策として実現させることができるかについて、しっかり勉強し、多くの人から意見を聞き、省内外の関係者を説得してまわることになる。

 

■どんな人が環境省に向いているのか

 そんな環境省にはどのような人が向いているのか。ある職員の言葉が印象的だ。「最も重要なのは「連携プレー」。「自分が、自分が」という、自分中心の人には向かないかも。個人プレーの職場ではありませんから。人と会うのが好きで、人と繋がって何かをやりたい、と思える人が向いていると思います」。

  こうしたコミュニケーション力はもちろんのこと、上司の指示を具体的な成果としてイメージできる能力や、複数の仕事を期限までに平行して進めることのできる能力、政策のアイデアを粘り強く、多くの人を説得してまわる調整力や行動力も必要のようだ。
 この職場を目指す学生へのアドバイスとしては、「環境省に入ることが目的にならないで欲しい」ということだ。手段が目的になってしまうと、長続きはしない。初めに抱いた「志」を大事にして、就職活動をして欲しい。


*この記事は、2005年に学生NGOエコ・リーグ(全国青年環境連盟)の機関紙「ECOLEAGUER」に連載されているものです。


第1回:「環境部のお仕事をしてみる。」

第2回:「シンクタンクのお仕事をしてみる。」

第3回:「コンサルティングのお仕事をしてみる。」(上)

第4回:「コンサルティングのお仕事をしてみる。」(下)

第5回:「特別編〜やりたいことが分からなくなった〜」

第6回:「環境教育のお仕事をしてみる。」

第7回:「女性環境起業家にインタビュー」

第8回:「環境省のお仕事をしてみる。」

第9回:「環境就職の「不安」を考える。」

第10回:「即戦力とは何かを考える。」

第11回:「専門知識は重要か?」

第12回:「農業のお仕事をしてみる」 NEW!

第13回:「就職活動の棚卸し」 NEW!

 

*この記事は、青年環境NPOエコ・リーグ(全国青年環境連盟)の機関紙「ECOLEAGUER」に連載されているものです。



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