環境就職がわかる!・連載よみもの
えこわーくトリビア〜素晴らしき環境就職〜

第12回:農業のお仕事をしてみる。

執筆:エコ・リーグ キャリアサポート部長 小林功英  


■農業がしたい!

 環境問題を勉強しているうちに、有機野菜や無農薬のおコメの重要性に気付き、あるいは、牧歌的な風景や、自然と共に生きる姿にあこがれて・・・

 将来は農業がしたい!!

 いまや、学生に限らず中年サラリーマンなどでも、退職後に田舎で農業をしてノンビリ、という暮らしにあこがれる人も多いと聞く。
  しかし、実家が農家である、ある人の一言にとても納得した。

  「農業とは、生きる為の生業(なりわい)。決して、簡単に作れるわけでも、ノンビリしているわけでもない。農業をやりたいという人の多くは、単に「農作業がしたい」だけだと思う」

  自分で畑や田んぼを持ち、生産し、出荷するということは、それこそ「起業」と同じ、というのである。


■単に生産しても売れない

 そもそも、農業とはどのようなものか。
  色々な本を読んでみても、その全貌はなかなか見えない。その理由はいくつかあるが、農業は他の産業とは比べ物にならないほど、多様な側面を持っていることが挙げられる。
  栽培する作物は、コメ、ダイズ、ジャガイモ、イチゴ、トマト、スイカ、ホウレンソウ、ダイコン、リンゴ、ミカン、鶏卵、乳牛、肉牛、キク、シクラメン、シイタケ、茶、等何百種類にも及ぶし、栽培法もマーケティングも多種多様。また、産業としても、トップクラスの国際競争力を持つ分野もあれば、江戸時代とたいして変わらない、遅れた分野まで混在している。

 特定の野菜に絞るにしても、輸入品も含めて過当競争になっていないかとか、価格変動が激しくないかといった、マーケット動向もにらみながら決めていかないと経営が成り立たない。そして、その農作物を必要としている人(業者・消費者)にいかに売るか、どうすれば自分達がつくった野菜を買ってもらうかが、問われてくる。

  「売れそうだから」という漠然とした予測だけで、ただ闇雲にレタスやトマトを生産してみても、売れるはずがない。また、市場の動きを探るのは、現状がどうであるのかというだけでは十分ではない。その商品の将来性、この先、何年ぐらいまで需要が伸びるのかとか、どういう付加価値をつければ、将来も安定した消費が可能なのか、といったことまでリサーチする必要がある。単に生産するだけが、農作業をしているだけが農家の仕事ではないことを、しっかりと理解しなければならない。


■農家のキャリアはどうつむ?

 一般的には、農業にまったく携わったことのない人とか、過去に少しだけ手伝ったことがある程度という人であれば、当然ながら農業を実際に体験して、農作業の技術なり、作業プランの立て方なりを習得しなければならない。
 そのためには、社団法人日本農業法人協会や、全国農業会議所などに相談してみるといいだろう。例えば、日本農業法人協会では、「インターンシップ制度」によって研修ができるよう、各地の農業法人を紹介してくれる。どれくらいの経験を積めば、一人前の農業人となるかは人それぞれであるし、また、独立の際になにを事業主体とするかとか、どの程度の規模から農業法人をはじめるかによっても、技術等の習得の仕方や度合いが違ってくる。

 そして、農業法人や大規模農家である程度の研修を終えた時点で、もしもその生産法人や農家が気に入って腰を落ち着けたいというのなら、そのままそこに「就職」すればいい。

 また、もしもさらに規模の大きい生産法人で農業をやってみたいとか、自分がとくに手がけてみたい作物があるとか、あるいはより地元に近い生産法人で農業を続けたいという場合は、自分でその生産法人と直接交渉するなどして、そちらに移っていっても構わない。


■ある農家の一日

 あるミカン農家では、次のような一日を過ごしている。

 まず、季節、天気などの自然の状況により様々であるが、早朝から深夜までみっちりと作業というわけではない。朝は草刈、園地見回り、施肥、苗の根元の草取りなどを行い、夕方には仕事は終了。夏場の昼間は暑すぎるので仕事はしない。基本的には、非常に単調かつ地味な作業である。しかし、特に農業を始めたばかりだと、試行錯誤の連続で無駄な作業が多く、仕事にムラもでてくる。先輩農家の知恵や経験を仰ぐことが重要になるから、地域との付き合いがうまくできないと生き残っていけない。

 必要なのは忍耐力であると、農家の方々は口を揃えて言う。ある人は、「自分の無知にがまん。自分の至らなさにがまん。思い通りになかなかいかずにがまん。ビンボーにがまん」と、いかに大変かを静かに説く。

 そのような中でも、続けてやっていけるのは、「農作業が楽しいから」という一言に尽きるという。出荷も手がけるある若手農家は、「出荷の事務作業は慣れれば誰でも出来ると思うが、農作業は好きじゃないと出来ない」と笑う。また、自然との対話が仕事の本質とはいえ、仕事をしていて嬉しいのは「お客様にお礼や手紙を頂いた時」だそうだ。

 農業は、自然との係わり合いはもちろん、様々な「人」との係わり合いで成り立っている職業である。「人付き合いが苦手だから」農業を、と考える人もいるかもしれないが、それは大いなる誤解である。

 さて、次のどれかに当てはまる人は、もう一度思い直したほうが良いかもしれない。
  @「農業をやりたい」というだけで、どんな農業をやりたいか分からない人
  A経験ゼロだが、有機栽培に関心があるので初めから有機栽培をやりたい人
  B自給自足が出来たらいいと漠然と考えている人。

  最後に、先輩農家からのメッセージを紹介する。


■先輩たちからのメッセージ

 「ある農場の研修生になるのなら、まずそこにいる人たちの言うことを素直に聞いて謙虚に教わること。資格とったり自分の専門をアピールしたりはその次です。草取りなど単調な仕事も、一生懸命やる姿勢と気持ちが大事ですね」

 「自分の経験を踏まえていうと、農業は奥深くおもしろい。そして、知識も大事だが、現場に立つことが一番大事だと思う。自分も高校・大学と恥ずかしながら農業のことを全く勉強したことがなかったが、後継者不足などで荒れていくミカン山を借りて、何とか建て直し、収穫できるようになった。失敗をおそれず、何事もやってみなければはじまらないと思うので、是非挑戦してほしい」

 「悪いことは言わない。やめとけ!どうしてもやりたいという思いがあれば、何とかなるかもしれないし、なんとかするだろう。数年間は本当に貧乏暇ナシ!かもよ」


*この記事は、2007年に学生NGOエコ・リーグ(全国青年環境連盟)の機関紙「ECOLEAGUER」に連載されているものです。


第1回:「環境部のお仕事をしてみる。」

第2回:「シンクタンクのお仕事をしてみる。」

第3回:「コンサルティングのお仕事をしてみる。」(上)

第4回:「コンサルティングのお仕事をしてみる。」(下)

第5回:「特別編〜やりたいことが分からなくなった〜」

第6回:「環境教育のお仕事をしてみる。」

第7回:「女性環境起業家にインタビュー」

第8回:「環境省のお仕事をしてみる。」

第9回:「環境就職の「不安」を考える。」

第10回:「即戦力とは何かを考える。」

第11回:「専門知識は重要か?」

第12回:「農業のお仕事をしてみる」 NEW!

第13回:「就職活動の棚卸し」 NEW!

 

*この記事は、青年環境NPOエコ・リーグ(全国青年環境連盟)の機関紙「ECOLEAGUER」に連載されているものです。



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