環境就職がわかる!・連載よみもの
えこわーくトリビア〜素晴らしき環境就職〜

第11回:「専門知識は重要か?」

執筆:エコ・リーグ キャリアサポート部長 小林功英  

  昨年末、エコ・リーグ主催の「環境」就職・進路相談会が東京・名古屋・大阪・九州で開催された。開催に携わったものとして、ひとつだけ、学生の皆さんに改めて考えてほしいことがあるので、この場をお借りしてお伝えしたいと思う。

何度も何度も述べてきたことである。それは、「専門知識」に関することだ。

 就職活動生からの質問として、非常に多いのが「自分は文系だが環境に関する仕事はできるか」「専門知識は必要か」「資格を取ると有利か」というもの。自分の専門分野を生かした仕事をしたい、という学生もいる。このたび、大阪会場で講演をする機会を得たので、そういう学生への回答として、「知識は重要ではない」ということを繰り返したが、その後のカウンセラーとの相談において、「知識は必要なのか」という質問をする学生がいた。話を聞いていなかったのだろうか。

 もっとも、そうした不安は分からないでもない。我々は、これまでの人生において、学力テストという形などで、全て数値化された指標で測られてきた。就職活動時にも、テストによって客観的に証明が出来る「何か」をアピールしたいと考えるのは当然である。

 しかし、改めて、しつこくなるくらい、言おう。

 知識は重要ではない。厳密に言えば、コミュニケーション力や行動力、前向きな態度といったものに比べて、知識は、求められる項目のうちで優先順位がとても低い。仮に入社テストがあったとして、環境の知識が満点でも、コミュニケーション力が低ければ絶対にパスはできない。

 そもそも、「専門知識」について、多くの学生が誤解をしている。学生のいう「専門知識」とは、「専門用語を知っている」程度ではないだろうかと思う。自分に関係のある学部学科の「○○理論」や「××という現象」を習ったことがある、聞いたことがある、その程度ではないのか。それは、知識ではなく、「情報」という枠を出ないのではないか。専門知識を持つということは、持論も含めて3時間でも4時間でも体系的、多角的に話ができ、人と議論をし、社会に向けて有意な意見を発信していけることではないか。

 大学自体も、そういう専門知識を身につける教育を目指しているのではない。大学の学部で身につくのは、教養やせいぜい専門「基礎」知識程度である。

 例えば、環境関連の学部であれば、環境問題という答えのないテーマについて、自分で情報を収集し考え、自分なりの答えを出していく、という「問題発見・解決能力」の育成が目的である。環境問題の専門家を育成することではない。国際関係学部もそうだ。世界中の多様な価値観を理解しながら、様々な課題をどうやって調整していくか、という能力を身につけさせるのである。こうした能力は、環境だから国際だから必要なのではなく、社会で働く全ての人に必要なことである。

 だから、「教養」なのである。国際関係学部を出たから、国際関連の専門知識が身につき、例えば、国際公務員に就職ができるわけではない。専門知識は、ふつう大学院で大量の論文を読み、あるいは自ら書き、学会等で発表をし、議論をしていくことで身につけていくものだ。

 逆に言えば、社会に出てからも、一部の会社を除いては、専門的な知識が問われる場面はあまりないということだ。だから、環境に関する情報も一般的なものだけでよい。○○入門シリーズの「環境問題」というテーマを2、3冊でも読めばよい。社会人だって、新しいテーマに取り組むときには、全く情報のない状態から手探りで始めなければならない。学生と違う点はといえば、恐らくこの収集のスピードであろう。「3冊の本を読む」と言われて、「まあ、1日に1冊ずつ」などと考えることはない。1日で熟読しなければならない。時間も「コスト」だからである。

 現代の社会においては、インターネット等で情報はすぐに獲得できるので、「知識(情報)があること」はアドバンテージにはならない。実際、学生の皆さんがテスト前に一夜漬けができるのと同じように、社会に出てからでもその程度で身につけることが出来る。

 社会で求められるのは、能力や意欲など、自分で「経験」しなければ得られないことだ。最も重要とされるコミュニケーション力は、本を読んでも身につかない。実際に人と話さないと身につかない。それも、ある一人とひとことふたこと話したから身につくものではない。「苦手」であるなら、苦手と感じなくなるまで、様々な人と数時間でも話し続けることで身につけることが出来る。意欲とは、自分で立てた目標を達成することを繰り返すことで身についていくものでもある。能力も知識も、どちらも「身につけるもの」であるが、一番の違いは、能力は一夜漬けでは身につかないということだ。

 だから、学生に何度も繰り返し言うのである。TOEICや資格の勉強をしている暇があれば、一人でも多くの社会人と話しをしろ、と。家族の知人、部活・サークルのOB、あるいは、キャリアセンターなどで紹介をしてくれるかもしれない。バイト先の社員でもいい。周りに社会人はたくさんいるのだ。そうした人と、仕事について、自分のやりたいことについて話をしてみるといい。そうした経験を積まずに、「私にはコミュニケーション力があります」とは言いがたい。

 エコ・リーグにも、多くの社会人も関わっているし、ギャザリング等にも参加している。そうした人を通して、また新たな社会人を紹介してもらい、自分ならではの社会人人脈ネットワークを作って欲しい。

 ぜひ、そういう機会を活用してほしいと思う。

*この記事は、2005年に学生NGOエコ・リーグ(全国青年環境連盟)の機関紙「ECOLEAGUER」に連載されているものです。


第1回:「環境部のお仕事をしてみる。」

第2回:「シンクタンクのお仕事をしてみる。」

第3回:「コンサルティングのお仕事をしてみる。」(上)

第4回:「コンサルティングのお仕事をしてみる。」(下)

第5回:「特別編〜やりたいことが分からなくなった〜」

第6回:「環境教育のお仕事をしてみる。」

第7回:「女性環境起業家にインタビュー」

第8回:「環境省のお仕事をしてみる。」

第9回:「環境就職の「不安」を考える。」

第10回:「即戦力とは何かを考える。」

第11回:「専門知識は重要か?」

第12回:「農業のお仕事をしてみる」 NEW!

第13回:「就職活動の棚卸し」 NEW!

 

*この記事は、青年環境NPOエコ・リーグ(全国青年環境連盟)の機関紙「ECOLEAGUER」に連載されているものです。



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